インタビュー

教授が語る、
ケアプランデータ連携システム「今、なくてはならないもの」

石山 麗子教授 (いしやま れいこ)

国際医療福祉大学大学院教授

1992年武蔵野音楽大学を卒業、音楽療法を通じて知的障害児入所施設に入職、障害者職業センター・障害者職業カウンセラーの経験を経て、2001年介護支援専門員。2005年大手総合介護事業会社入社。シニアケアマネジャーとして140名のケアマネジャーを統括。2013年国際医療福祉大学大学院博士課程修了。2015年日本介護支援専門員協会 常任理事。2016年厚生労働省老健局振興課 介護支援専門官。2018年 現職。

ケアマネジャーとしての経験もありながら、国際医療福祉大学大学院にて研究活動を行っている石山教授に本システムの魅力についてうかがいました。

削減できた時間で、ケアマネジメントは豊かになる。

2023年4月よりケアプランデータ連携システムが本稼働となり、導入する事業所は増加しています。本システムの所感をうかがえればと思います。

ケアプランデータ連携システム、「ついにできた!」と思っています。
ケアマネジャーは私もさせていただいていたので、その立場からも述べさせていただきますね。
ケアマネジャーであり続ける限り、「モニタリング」と「給付管理」というものがあって、これはずっと続いていくものなんですね。「モニタリング」というのは、ご利用者との面談の時間であって、一番大切にしなければならない 、必ず人が行わないといけないもの。「給付管理」は事務作業で、月末・月初で4〜5日ぐらいをかける、という感じのものです。この期間は、ご利用者の状況に変化があったとしても、どうしても「給付管理業務がある」という事実が常に気になってしまうんです。

大切な「モニタリング」の時間が圧迫されてしまっているんですね。

そこで、本システムを活用して、「給付管理」の時間を短くできれば、ご利用者にあてる「モニタリング」の時間が増え、ケアマネジメントはこれまで以上に豊かになっていくと思っております。
こういったものを使えるというのは非常に良い時代が来ましたよね。

休みにくく、我慢する仕事からの脱却を。

本システムは、介護人材不足という大きな課題を意識して開発されましたが、その点に関してはどうお考えでしょうか?

おっしゃる通り、今、ケアマネジャー不足が全国で起きておりまして、ケアマネジャー自身も、それ以外の方々も非常に心配されている状況にあります。
居宅のケアマネジャー業務は月単位です。そのなかで忙しい時期があることをケアマネジャーの皆さまは当然承知されています。であればこそ、例えばご家庭の事情等で「給付管理の時期だけどお休みが欲しい」と思っても、我慢してらっしゃることがあると思うんです。

やはりお休みを取ったり、自分の時間をつくったりすることが、かなり難しいんですね。

やはり、ケアマネジャーは介護保険制度の核としてやりがいのあり、若い方々にとっても魅力のある仕事なので、働きやすい環境になってほしいと思います。本システムによって、人でなければならないところは人で、そして機械でいいところは機械で、というメリハリの利いた業務の仕方が発展していくといいですね。

それによって、どんな未来が叶えられるでしょうか?

お正月明けも、ゴールデンウィークも、遠慮なく休める、そうしたゆとりある未来が叶えられると思います。
ケアマネジャーであるとなかなか海外旅行には行けないんですね。毎月「モニタリング」がありますし、「給付管理」がありますので。今後は、ケアマネジャーが自由に旅行に行ったりご家族との時間を過ごしたりといったことができるようになって、豊かな私生活はもちろんのこと、ご利用者にケアマネジャーとして役立てる時間も創出できる。そんな未来が待っているのではないでしょうか。

正確性を期すという責任を果たすために。

介護分野の研究者の視点で、本システムをどのように捉えられていますか?

今の時代になくてはならないものだと思います。紙を見て、パソコンを見て、手作業で一つ一つ何かをする、という時代ではないと思っております。介護業界以外でファックスでやりとりをしたり、紙媒体で手渡しをしたり、ということはあまりないはずです。

それは、ご自身もケアマネジャーをやられていた際に大変だったことなのでしょうか?

そうですね。デジタル化がされていないと、一つの文章を書くために、パソコンでの入力作業と、紙に書くことを両方しないといけない、などの大変さがありましたね。パソコンを見て、また別のものを紙で見て、という作業をしているとどうしても目が疲れるという点もありました。しかも、ケアマネジャーの平均年齢は50歳を超えているんですね。ミスを避けるために、大きな負担がありました。

大変さと責任が本当にある仕事なのですよね。

保険の給付であるという以上、やはり正確性を期す必要があります。
人の手よりも、本システムなどを活用して、保険制度や保険請求の質を担保していく。
こういった責任を果たすのも、ある意味ケアマネジャーの責務の一つではないかと思っています。

ちなみに、ケアマネジャーの年齢に関する話に戻ってしまうのですが、個人的な意見として、ケアマネジャーは人の人生を支援する仕事なので、いろんな世代の方がいていただけると非常に良いと思っています。

このシステムで、良い方向に大きな変化がありそうですよね。

忙しい子育て世代の方々も、介護をしている世代の方々も、誰でも自由に働き方を選べるような、そんな時代に本システムを活用することで、バランスの取れた働き方を実現することができるんじゃないかと思っています。
今、まさにこの業界が大きく変わろうとしているタイミングなので、本システム、使わない手はないと思います。