インタビュー

利用者が語る、
ケアプランデータ連携システム「介護業界の時代が変わる瞬間」

長谷川 徹代表 (はせがわ とおる)

居宅介護支援事業所
株式会社トライドマネジメント代表

2008年-2017年 ケアマネジャーとして介護保険サービスを必要とする多くの方々を担当。2017年、ケアマネジャーを公平に評価できる会社を作りたいという思いから、株式会社トライドマネジメントを設立。現在、横浜を拠点にケアマネジャー8名、事務員3名を束ねる。

自社でICTを積極的に活用し、介護現場の生産性向上に注力されている長谷川代表に、本システムの利用者として、導入後の変化についてうかがいました。

紙で作業するスタッフの、大きな負担を軽減するために。

2023年4月よりケアプランデータ連携システムが本稼働となり、早い段階で利用されていたとうかがっていますが、導入に至ったきっかけを教えていただければと思います。

導入したきっかけは、とにかくスタッフの負担を軽減したかった、というのが第一です。やはり、郵送やFAXなど、紙の作業が多いのが、この業界の特徴なんです。
例えば、「介護給付」を国に申請するレセプトの時期になると、ケアマネジャーは一枚一枚、紙で送られてくる実績とパソコンとを交互に見ながら実績入力をしていきます。一般的には大体1日、新人であれば1日以上かかります。

そんなにかかるんですね。

それだけではなく、更には、提供表の印刷からFAXまで
中には郵送という形を取る事業者もありますが、いずれにせよ、印刷から交付まで、約1日かかります。誤送信がないように気をつけている間に、FAXが止まったり、印刷に手間取ったりするトラブルも発生します。
このような労力がかかるため、それをどうしても削減したかったという気持ちが導入に至った最大の理由ですね。

異なる介護ソフト間でもつながる価値。

そのような想いを抱かれている中で、初めて本システムを知った時、どう思われましたか。

このケアプランデータ連携システムの記事を初めて見た時、「これだ」と思いました。これしかないだろう。やらない手はないだろう、と。そもそも、これほど進んでいる世の中にも関わらず、なぜ、紙のやり取りをずっと続けているのだろう、という疑問も抱いていて。

そういった現場の方々の声もいただきながら開発したのが、本システムですね。

ただ、これまで類似したシステムは意外とあったのですが、別々の介護ソフトを使う会社が多い中、同じ介護ソフト間でしかデータ連携できなくて。それだと使いづらいな、とずっと思っていました。

そういった課題を解決できるよう、本システムは、様々なベンダーとも調整を行なってきた経緯があります。

ベンダーのサイトや国民健康保険中央会のサイトにおいても「具体的に何ができるか」が明記されていて、どのように活用すれば業務を効率化できるのかがすぐに分かりました。厚労省が提供しているということもあり、とにかく、初日から取り入れたい、という心境でした。

サイト…ケアプランデータ連携システムサポートサイト(本サイト)。

削減できた時間、費用、労力を、やりたかったことへ。

では、実際にご利用を始めた時、どのような印象を受けましたか。

とにかく「使いやすい」。感覚で使えるのがメリットだと思いました。例えば、一人分を送りたい時はここ、一斉送信したい時はここ、という操作がわかりやすい。仮にわからないことがあれば、サポートに連絡をすれば教えてくれました。やり方としても、送信時は、自分の介護ソフトでCSVを出力して、それを本システムにドラッグ&ドロップして、ワンクリックするだけ。実績を取り込む際は、その逆を行えば良いだけなので、導入すれば非常に楽です。実際、60名ぐらいの方を連携した時、一気にでき、他のケアマネジャーも非常に驚いていました。

今は使い始めてから数ヶ月経過していると思うのですが、その中で、本システムがもたらした効果は何かございますか。

非常に多いです。細かいことを言えばたくさんあります。まず紙代、印刷費、送信費、郵送費について。毎月、万単位でかかっていた分が、かなり抑えられるようになりました。

そういった関連費は、本システムを利用することで、試算上、年間約80万円削減できる、と言われていますね。

もちろん節約できるというのはありがたいことではあるのですが、それよりも良かったのは、人間の労力を軽減し、それによって別のところに時間が割けることでした。
例えば、一人のケアマネジャーが担当できる人数を増やせたり、行きたかった研修に参加したり、ご利用者との時間をしっかり作れたり。こういった行動は細かい時間の積み重ねなので、それができるようになるのも大きな変化です。そして、事業所内では誤送付が減らせたり、他のICTを導入したり、それによって有休取得率が上がったり。とにかく浮いた時間をいろんなところに活用でき、別の目的に投資できるという点が大きなメリットです。

約80万円……ライセンス料21,000円の投資で、年間約80万円の関連費の削減が見込める。出典:令和2年度老人保険健康促進事業「介護分野の生産性向上に向けたICTの更なる活用に関する調査研究」。

他の事業所の方々とも関わることがあると思いますが、そういった方々の利用状況について伺えますか。

実は、私が考えていたよりも、導入している事業所が少なかった点に驚きました。
本システム、メリットや効果は分かりやすいのですが、単純に「知らなかった」という方が非常に多くいらっしゃいました。この現状、個人的にもったいないと感じています。 この業界は、やはり年配の方々も多く、地域の勉強会や連絡会など、そういったローカルな周知も必要だと思います。
知ってはいるものの、ITに苦手意識があり、導入をためらっている方々も非常に多くいらっしゃいます。ただ人によっては、存在を知らなかったとしても、システムについてきちんと説明すると、意外とすぐに取り入れる方もいらっしゃるんです。私が直接説明した方で、実際に利用されている方々もいらっしゃいます。

オンラインだけでなく、対面でも説明をする機会を設けていくことが大切なんですね。

はい、例えば、研修ですね。本システムは「ケアマネジャーがケアプランを送る」というイメージが強いですが、提供表や実績をデータでやりとりすることは、サービス事業者にとっても大きなメリットになります。そのサービス事業者もケアマネジャーも、忙しい中、研修によく出るんです。そういったところで本システムの価値を伝えていくのも、一つの手段ではないかと考えています。

使えば使うほど、費用対効果が高まる。

現場で働く職員の方々をたくさん見てこられたと思いますが、本システムのメリットを活かしてどういった働き方をしていただきたいと思いますか。

ケアマネジャーには、ご利用者と積極的に話す時間を作ってほしいです。具体的には、相談・援助をする時間と、あとはそれに伴うサービス調整をする時間です。
それ以外では、ケアプランの内容を検討する担当者会議への本格的な参加。流れ作業的なやりとりだけで終わってしまうことが多いため、このような場面においても、明確な課題を持ち、専門職の意見を聞くなど、本来あるべき担当者会議を実現していくべきだと感じています。

そういった働き方がより多くの方々に実感していただけると嬉しいですね。

そうですね。これは使えば使うほど、間違いなく、費用対効果が著しく高くなるはずなんです。
とにかく時間を作ることができ、その時間で、新たな顧客にアプローチしたり、採用に時間を費やしたり。
特に、2021年の介護報酬改定以降は、システムの活用で時間ができれば、ケアマネジャー1人が担当できる利用者の上限、つまり逓減性を39件から44件へ増やすことが可能になりました。
これは経営にも、かなりプラスの影響をもたらしていくはずです。
このように、様々な事業所が使うことであらゆる効果が発揮されるんです。

利用者が増えれば増えるほど、業界全体が抱える人材不足などの課題の改善にもつながりますね。

はい。こういったシステムが登場した今こそ、介護業界の時代が変わる瞬間だと思っています。
変わることには勇気が伴うこともありますが、そんな中でも、ここに乗ってみる、というのは間違いなく大きな手段の1つだと思います。

ご登壇いただいた2023介護事業所向け生産性向上ビギナーセミナー
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei_seminar2023.html