インタビュー

利用者が語る、ケアプランデータ連携システム「届けたいケアを、続けていくために」

大須 美佐子所長(おおす みさこ)
池田営業所 訪問介護サービス

藤井 尚子課長(ふじい なおこ)
在宅介護推進課

今村 あおい代表(いまむら あおい)
代表取締役

吉岡 さとみ部長(よしおか さとみ)
経理管理部

(お名前は写真左から順)

株式会社 新生メディカル

1977年の設立、1988年より訪問介護サービス開始。以後岐阜県内の岐阜市、大垣市、瑞穂市、高山市、多治見市、池田町の6営業所を展開し、居宅介護サービスを中心に、介護予防、日常生活支援総合事業、定期巡回、随時対応型訪問介護看護サービス、障がい者居宅介護サービス、福祉用具の貸与・販売など、その方の望む暮らしができるよう支援を行っている。

ITを活用し生産性向上に取り組みながら、細やかなサービスで地域の方々の生活を支え続ける新生メディカルの皆様に、本システムを導入時、導入後の様子を伺いました。

自分たちから働きかけて、地域を耕していく。

新生メディカル様では、早い段階からケアプランデータ連携システムを導入されていますね。どのような理由で導入を決めたのですか?

吉岡さん:ご利用者様にサービスを提供すると、ケアの記録を付けたり、その記録をもとに介護報酬を受け取るための手続きをしたりと、必ず事務作業が発生します。この作業は本来ケアマネジャーやサービス提供責任者などが行い、事務職員がサポートをするのですが、当社では、ケアマネジャ-やサービス提供責任者にはご利用者様への対応に集中してもらえるように事務職主体で作業を行っていました。だから、現場よりも事務のほうが何とかならないのかなとずっと思っていて……。そういった課題意識もありましたし、5年ほど前に訪問介護で介護記録、実績、ヘルパーへの給与計算ができるソフトを導入した経験から電子化の便利さに気が付いていたこともありました。そこで、ベンダーからケアプランデータ連携システムの話を聞いたときには、すぐにやろうと思いました。

そのときはまだ導入している事業所は少なかったかと思いますがどうお考えでしたか?

今村さん:当社のグループに社会福祉法人があり、連携できる先が一つはあるという算段がありました。それに、国が主導して動くとのことで、セキュリティも高くこれから導入する相手も増えるだろうと思っていました。

大須さん:導入が決まってすぐに、周りの事業所に導入の様子についてアンケートをとって働きかけもしました。こちらから動きをかけると、相手がいるならやろうと思って考えるきっかけにしてくれる事業所もあると思ったんです。

広がるのを待つだけではなく、周囲の事業所が動くきっかけになろうと意識されたのですね。

今村さん:ええ、その意識は普段から強いかもしれないですね。私たちは在宅で施設を持っていないので連携せざるを得ない。地域を耕していかないといけないという気持ちがあります。

作業時間を削減して、利用者様に細やかなサービスを提供し続ける。

実際に使ってみて何か変化はありましたか?

藤井さん:事務が行っている実績の確認がすごく楽になりました。毎回とても細かくチェックをしていたので… … 。紙でやり取りしていた時は、サービス事業所から提出された実績票を、システムに一つ一つ確認しながら手入力していました。手入力なので転記ミスがないよう定規を当てながら、ミスがないか本当に何度も確認していました。

そんなに細かい作業だったんですか。

大須さん:ケアマネジャーは、その実績ひとつひとつに、確認することがたくさんあるんです。予定から何が変わったか、訪問介護の場合は当日ケアの時間や、デイサービスだと理学療法士の有無で加算が変更になるなど、ほかにも色々。それを手書きの内容から読み取らないといけません。その確認をしながら、サービスコードを増やしたりして実績を手入力していきます。その手入力と転記ミスの確認作業がなくなることで、プランが適正かどうかの内容の確認作業にのみ集中できます。

今村さん:私どもの訪問介護は、要介護状態になってもご利用者様の本来の生活リズムを維持・継続できるよう、必要な時に必要なだけ支援することを重視しています。そのため、一日に複数回、毎日訪問するんです。イメージとしては、施設のような支え方ですね。多い時は一日に4、5回も同じお宅に訪問することもあります。そうすることで利用者様の自立的な生活を支えています。それを都度記録するので、必然と実績はとても細かくなるんです。

吉岡さん:それがケアプランデータ連携システムを導入してから、転記によるミスが無くなり、入力された情報を信頼して進める形になったので、確認にかける時間が本当に小さくなりました。導入してから、段取りがしやすくなったというか、残業が少なくなりましたね

大須さん:そうそう、お正月、お盆、連休に出てもチェックが終わらないくらいだったのに、え!もう帰れるの?っていう感じに。すごく楽になりましたね。

細やかなサービスを提供するために、電子化は必然なのかもしれませんね。

吉岡さん:そう思います。細やかなサービスを提供しようとすると、どうしても事務作業は増えてしまいます。でも、そのストレスが小さくなると、本当に必要なサービスを入れやすくなると思います。

大須さん:本当に。以前の、紙のままケアマネジャーが処理する体制だったら、月初に新規のご利用者様を受けにくくなってしまったり、業務量に圧迫されて向き合いきれないこともあったかもしれないなと思います。サービスを続けていくのに電子化は必要でしたね。

整理と、ルール作りと、勉強する姿勢。

導入してからはどのように現場に浸透させていきましたか?

大須さん:当社の場合は、6営業所同時に開始するため、最初は関わる職員にシステムの目的を周知する説明会を行いました。その時の資料は、国保連のホームページにある説明資料を使いましたが、確実で一番分かりやすかったんです。
その前にフォルダの整理やマニュアルの作成、問い合わせのルールの設定など準備を行いました。

説明会の前に様々な準備をされたのですね。具体的にはどのようにされたのですか?

吉岡さん:フォルダの整理では、複数の事業所が使うことや年月が経って後任が使うことも考慮して、誰が見てもわかるように名前の付け方やフォルダの分け方を考えました。どの作業のときにはどのサーバーを使い、どのフォルダに入れるかを明確に決めたんです。現場に任せるところはもちろんありますが、そういった全体ルールは決めてしまったほうが混乱がないですね。

藤井さん:操作マニュアルは、常に最新で万人に分かりやすく作成されている、国保連のホームページやベンダーの操作説明書を利用しました。それに加え、これらのホームページや説明書のフォルダの場所、取り込んだデータをどこに保存するかなどの社内ルールを、スクリーンショットを利用した手順書を作成しました。一手順ずつ確認できるような内容になっています。一度聞いただけではすぐにわからないですから、説明会が終わった後自分たちで操作できるように。触ってみたらわからないことが出てくると思います。疑問については、当社のケアプランデータ連携システムQ&Aと国保連のQ&Aに同じような事項が無いかを確認します。このシステムQ&Aは、職員一人一人が、その都度入力して積み上げていくものです。次に国保連のHPを確認、それでもわからなければベンダーやヘルプデスクサポートサイトに問い合わせる、という問い合わせのルールも決めて自分たちで解決できるような状態も整えました

説明会はどのようにされたのですか?

大須さん:国保連のマニュアル、ベンダーの操作説明書などを利用して担当者全員が参加できるよう全4回に分けて行いました。説明会では各事業所に担当者を決め、事務職員はフォローに入るよう事前にお願いしました。スタッフには、説明会の前までに一回はパスワードを入れてソフトを開けてもらうまでを試してもらうよう、お願いしました。

そんなに丁寧にご準備されたのですか。システムに詳しい方がいらっしゃるのですか?

吉岡さん:いえいえ。私たち自身もパソコンは全然得意じゃないんですよ。まず推進委員である私たちがベンダーのオンラインの説明会、国保連の説明会を聞き、実際に触ってみてわからないところを調べたり問い合わせたりして勉強しました。説明会の前には私たちも一度試してみて、「名前を付けて保存」の仕方ってこれで合ってるかなとか、csv.ってなんだろうとか、初歩的なことでもわからないことがたくさんあったので、サポートサイトやベンダーも活用させてもらいました。

大須さん:私たちもそうでしたが、やってみるまでわからなくて当たり前だと思いますし、触るまでイメージが浮かびにくいスタッフもいます。そこで、よくわからない状態でも進められるように全体のスケジュールを可視化し、ゴールを見えるようにしました。その上で、最初の月は、まず決めたこの日までにライセンスの登録しようというところまで。次の月は、予定を取り込むところまで。本当に一歩ずつですね。それにのっとってやれば今やることが分かります。特別難しいことはありません。とにかくやってみることです。
少しずつ触っていると中身が分かってくると思います。それでもイメージが湧きにくい場合や、うまく運用が進まない場合には私たちが直接出向いてスタッフの話を聞き、一緒にアイデアを出し合ったりすることもあります。うまくいかないときには顔を合わせることも大事ですね。

みなさんで試して、声を掛けながら進めていったのですね。

今村さん:私たちはパソコンに強い人がいるというわけではないですが、みんなで新しいことを行っていくノウハウは持っていると思います。コツは、新しいことをするときは意義を必ず伝えるようにして、自分ごととして考えてもらえるようにすることですね。みんな自分ごとと考えて、支え合って疑問を出し合いながら「ああだよね」「こうだよね」と意見を言い合えるような空気であったことも、上手く進められている理由の一つだと思います。導入してからしばらくたちますが、今も委員会を続けています。委員会で疑問や改善点を吸い上げて、現場も上もみんなで相談したり、勉強しながら進めているんです。

まずは、はじめてみる気持ちが大事。

これから導入を考える事業所の方々に何かお伝えしたいことはありますか?

今村さん: ITは敬遠しがちですが、取り組めば成功体験にもなりますし効果もあります。会社で取り組む価値は十分あります。連携を深める材料、という気持ちではじめてみてほしいですね。

藤井さん:私は「なんでデータ連携の担当なのかしら」と思うくらいパソコンには疎いですが、でも進められています。ソフトやITに弱くてもやってみるは大事、やってみたら意外とできますよと伝えたいですね。

吉岡さん:一か月ですぐに結果が出るものではないかもしれませんが、やってみる、チャレンジするという気持ちが大切ですね。そのときは「何のためにやるのか」を共有しながら進めていくのが大事だと思います。継続するためには、「何のために」を繰り返し伝えて自分ごととして進めるのが大事です。

大須さん:できるかどうか不安であれば、スモールスタートをおすすめしたいですね。熱量が高い一人や二人でもやってみて成功体験をつくってみるのがよいです。最初は、失敗しても紙があるし!気負いせずぜひやってみてほしいです。